だから初めから悲しくも無く、きっと2人には小説や漫画と言った出来事がこれからも沢山続き、それを画面端に居る私は眺めるだけに留まるんだろう。そう思ったから、ナオや円嘉に対する気持ちは案外冷静だった。
『それは…おめでとう』
取り敢えず言葉で祝って濁した私に、円嘉の眉が跳ね上がる。
『何、それ』
『…何が?』
『…っ怒ったりしないのかって聞いてるの!』
『怒って欲しいの?』
意味が分からず、私は首を傾げた。
地団駄でも踏みそうな円嘉はギリギリと歯を食い縛って『じゃあ何の為に!』とか言い始め、
『だって綴はナオの事好きじゃない!』
余計に混乱する事を言った。
恐らく円嘉も言っている意味分かっていないんだろう。こう言う時の円嘉はじっくりと腰を据えて話を聞いてやらないと納得しないのは分かっていたけれど、分かってて初恋奪われた訳だし、今はそこまでする義理も無い様に感じた。
『…はあ円嘉』
私の溜息付きの呼び掛けに、
『…っ』
怯えた様にがなっていた口を閉ざす円嘉。
何で?ともその時は思ったが、半面付き合い切れないとも思っていたので早々に切り上げ様とした。
『この参考書、友達から借りてるんだよ。で、明日返さないといけないからまた今度にしよう』
ヒラヒラとその参考書を円嘉に見せれば『誰のよそれ』と呟く。



