心臓が、
「ああ円嘉は俺の事が好きで付き合ったんじゃないんだ」
『綴は私の傍にずっと居るわよね』
グシャリと、
「小さい頃の独占欲の延長なのかと思ったんだけど、隣でずっと見ていると分かるんだよな…目がずっと追っているんだ。相手がどんなに離れようとも、傷付けてでも自分の傍に」
『どうして綴は私の事!』
「止めて」
音を立てた気がした。
そう言って俯いた私にナオは全てを悟って、
「お前は俺を嗤ってたんだろう!?」
堪らなくなったと言う体で声を張り上げた。
違う、知らなかった、そう私は知らなかった。
ナオ達が付き合い始めた時だって、私は2人の邪魔にならない様に。
『ねえ綴』
『…どうしたの?急に』
丁度距離を置き始めた頃、ナオにベッタリだった円嘉が私の部屋に来た事があった。
当時の私は、恋していたナオと人生最高潮に輝いていていた円嘉と傍に居るだけでも苦痛を感じる事もあったが、だからと言って尋ねて来たら邪険にする程でも無かったので、快く招き入れたのだけれど。
『私ね、ナオとヤッたの』
失恋して、見せ付けられている私を嗤いにでも来たのだろうか。
一瞬ふと怒りも湧いたが、直ぐに鎮火する。
だって円嘉と私は違う。
あの海で微笑む円嘉を見て、円嘉と私は同じ世界に居る様で違う世界に居る。所謂住む世界が違うんだと思い知らされたから。



