悲嘆に暮れている様な、やりきれない様な表情をしながらゆっくりと顔を上げて私を見る。
その視線に恨めしそうなものが含まれていて、ドキリとする。
そして、
「ーーーお前って何時もそうだよな」
そう切り出された。
これは根深いと感じた。
ユウナやリタが類似するモノをぶつけて来た時に似ている。
唾を飲み込んで「…何が何時もそうなの?」と慎重に問い掛けた。
「“何が何時もそうなの?”ね」
ナオは私のハッと鼻で嗤った。
何時もならイラッとしたと思うけれど、ナオの雰囲気に呑まれて何も言えなかった。
私の困惑した様子にナオは更に苛立った様に、でも頭を掻きむしって自身を落ち着かせ様としていた。
ふうっと息を吐いたナオは唐突に、
「…皆んなで中学上がりたての頃に海行った時、一緒に男みたいに遊んでいた円嘉が強烈に女だと思って嫌でも意識した」
昔話を始めた。
うん、覚えているよ。
海の匂いも、キラキラと反射した水面も、そこに立つ円嘉の美しさも、見惚れたナオが恋に落ちた事も。
全部覚えている。
良い思い出と言えば良い思い出だった。
「円嘉に付き合おうって言われた時は天にも昇る気持ちってこう言う事なんだろうなって思った。でもどんどん円嘉にのめり込んで、気付いた」



