私の言葉を聞いた獅帥君は私に、
「惣倉喜影に好き放題されていても誰にも話せなかったのに?」
と言って鼻で嗤った。
「それはっ…!」
元を正せば妃帥ちゃんが狙われると思って。
「妃帥を理由にするなよ」
「…っ」
確かに思い込んだ私も悪いけれど、何で急に獅帥君がこんな意地悪をし始めたのか分からないし、見下ろされている眼差しの冷たさも、長袖の服の上にデニム生地の上着を着ているのにも関わらず、背筋がヒヤリとして恐怖を煽られる。
なんか…理不尽だ。
そう思えば目の前がボヤけ始める。
すると獅帥君の目が大きく見開かれて、
「どうして、泣いているんだ?」
と自分が泣かせた癖にそんな事を言った。
何時もならもうー!獅帥君そんな言い方したら皆んな怖がっちゃうよ!とか言ったりするけれど、今はとてもじゃないけれど言える気持ちになれなかった。
「つづーー…」
私の頬から手が外れ、よく私の顔を見る為に上を向かせられそうになった所で、
「っ!」
「獅帥君のバーカ!!」
ゴーン!とそのシュッとした顎に自分の頭をクリーンヒットさせた。
よろめいた隙に私は扉を開けて部屋を飛び出す。
階段も凄い勢いで降りて、玄関へと手を掛ける。
そこで、
「綴!」



