うふふ…と笑えば「お気楽だな綴。精々普段通りにして嫌われるなよ」と言われてしまう。
「妃帥ちゃん嫌いにならないもん!」
「どうだか…じゃあ碌なおもてなしも出来ませんが、ゆっくりしてって下さい」
「ああ、ありがとう」
獅帥君に軽く礼してささっと居なくなる出来る実質兄の孝史。
その背を見送りながら「…取り敢えず入ろっか」と隣の獅帥君に言った。
「はあー…!落ち着く」
「…」
入れば特に変わり映えの無い我が家だけれど、此処の空気を吸うと落ち着く。階段を上って自分の部屋に戻るとちゃんと私の部屋に荷物が入っていた。きっと考史が入れてくれたのに違いない。出来る実質お兄ちゃんはやっぱり違う。
荷解きは後だなとくるりと振り向くと、着いて来た平凡な我が家を背景にしても、色褪せない美しさの化身を見る。
ぼうっと周囲を見渡す彼に、
「獅帥君、居間に居てね。野暮様済ませたらおもてなしするから」
期待してて!(何をと言われれば困るけれど)と言えば「野暮様?」と首を傾げた。
その仕草は幼気で可愛らしく感じたが、いやいやごほんごほん。
「うん。美術館行く少し前にナオから連絡があって、帰って来たら出来るだけ早く会いたいって言われているから」
私は取り敢えず携帯と財布を自身のワイドズボンのポケットに入れた。



