いつからお前は毒された。

 駄目だ頭が可笑しくなりそうだ。

 幼い頃から見慣れきった匡獅の私室が、ぐにゃぐにゃと曲がっている様に見える。


「匡獅、」

「ん?」

 
 絞り出した言葉は、
 

「あの子達は、モノじゃないんだ」
 
 
 これも意味の無い言葉だと分かっているのに。


「愛されて、産まれて、」


 言っていてなんと白々しい事を言っているのかと心中で嗤う。

 
「ああ、愛しているさ お前を(・・・)。だから つくった(・・・・)


ーーーーお前からしたらさぞや愉しかったただろう。

 何の役目も果たせないお飾りの当主。

 憎むべき当主に飼われている面汚し。

 自分以外には嫌われ、それでも犬の様にお前に尽くす僕を。

 お前は。


「やめろ、いいもう。僕は…僕は…!」


 離せと腕を突っ張ったが、更に強く抱き込まれた。


「どうした八重?何が嫌なんだ?」


 子供の我が儘をしょうがないなあと聞く大人の様なその言い方にすら、僕は苛立った。

 勢い余った。


「お前は結局僕を愛していない!お前が真実僕を愛していると言うならこんな事はしない!」


 その一言で余裕に笑っていた匡獅が凍りついた。

 今だと思って匡獅の腕から抜け出して扉へと向かった。

 開け放った扉の先に、


「武凱!」

「お前らどうしたんだ」


 シンカンの中でも僕と、比較的友好的に接する男。