その後は別ルートで私の実家へと獅帥君と共に帰る事となり、ど田舎を高級車が走行し、すれ違う人や車が何故?と言う顔をしているのが居た堪れなかった。


「…」

「…」


 未だに獅帥君は話さない。

 それもそうか…自業自得だもんね。

 黙っていても仕方ない。

 観念して深呼吸し、口を開いた。


「…獅帥君本当にごめんね。妃帥ちゃんに良いって言われたから安直に出掛けちゃったけど、良くなかったんだよね?」


 窓に視線をやっていた獅帥君の、角度によっては翠玉色に見える瞳が私を映す。

 その視線は何を思っているのか検討が付かなかったが、これを逃したら駄目だと思って捲し立てる。


「そうだよね獅帥君が怒るのは妃帥ちゃんの事だけだもんね、幾ら妃帥ちゃんがいいよって言ってもちゃんと考えるべきだった本当にごめ、」


 んと言い掛けた所で、


「ーーー違う」


 沈黙を保っていた獅帥君が口を開いた。

 
「妃帥は関係無い」

「で、でも…」

「俺がムカついたからそうしただけだ」


 へ、ムカついた?

 獅帥君から思ってもみない言葉が出て目をパチクリしていれば、獅帥君はふいっと視線を逸らしてしまう。


…それってとも思ったが今それを追及してしまったらとも考えてしまう。

 それはだって、その、と言い訳が心の中に霧散した矢先、


「着きました」


 運転手の声に救われた。