気不味い、そして坂本君ごめんなさい。
「…」
「…」
お隣の、麗しの人の不機嫌オーラが凄まじ過ぎて辛い。
もう少しで実家に着くと言うのに、本来ならほっと一息を吐く場面なのだが安心出来ない。
私に対して怒っている、確実に。
それでも握る手は離さないから不思議なもの。
ただ現れた時の恐ろしい剣幕は、一言では言い表せない。
『獅帥君どうしたの、こんな所で』
『…』
何も返答が無いのが怖い。
柳眉を顰めている姿は決して機嫌が良いとは言えず、此処に何で居るのかとか、またパーティー帰りですかとか、色々聞きたい事があったが。
『…行くぞ』
『あ』
腕をギュっと掴まれ、引っ張られる。
『唐ど、っ』
坂本君の言い掛けに私より先に振り返った獅帥君は、その鋭い視線で黙らせてしまい、途端に青ざめさせてしまう。
こ、これは不味い。
スッと息を吸って、
『…さ、坂本君!一緒には帰れないけど、ごめん今日ありがとう!楽しかった!』
お静かにを無視した私の声に動揺しながらも手を振り返してくれた彼は本当に良い人です、ありがとうございます、後で死ぬ程謝りたおします、心に誓った。
連絡するね〜!と大きく手を振りながら、片方で獅帥君に引き摺られて去るしか無い私はドナドナされる牛の様に見えただろう。



