過つは彼の性、許すは我の心 参



 妃帥は赤い着物に隠れた足を組み、俺を見上げる。

 いや感覚的には見下ろされている気がする。

 妃帥が時々俺を見る目。

 愚か者を見下げる様な。


「ーーーお兄様は綴と褥を共にして何か勘違いしている様だけれど、綴は私のミケよ、お兄様のミケじゃないわ」


 心臓が嫌な音を立てた。


「し、褥ってえ?あの」

「ヤッたって事だろう」


 動揺する鉄将に楽が空気を読めと肘を入れながら黙らせているが、心中は大いに荒れていた。


「男性ってよく言うわよね、一回ヤッだけで彼女面するなとか。お兄様もセックスしたからと言って、綴が貴方のモノになったとでも思ったの?」

「…」


 妃帥は鼻で嗤う。


「やあねお兄様ったら。お兄様だって一夜限りの相手なんて沢山居たでしょう。何をショックを受けているの?」


 人を惑わす魔女の様に嗤う妃帥が、別の人間に思えた。

 戸惑う俺に妃帥は、


「駄目よお兄様、」


 間をゆっくり空けながら、


「綴は私のミケなのだから」


 そう諭して俺を嘲笑った。

ーーー妃帥はある日から俺に考えを隠す様になった。

 妃帥は俺が彼女に手を出した事を知った時に怒っている様には見えなかった。いや怒っていたのかもしれないが、妃帥に彼女は自分のモノであると断言されると、例え様の無い感情に襲われる。

 妃帥に対して抱くには攻撃的な感情。