ハハっと笑う匡獅は巫山戯ているのか分からない。
コイツは僕の大事な…片割れなのか?
「感謝しているよ富士恵さんには。八重が俺から逃げない方法を教えてくれた」
富士恵、本当にあの女。
僕達に流れるこの血の厄介さをろくに知らずに、娼婦の様に生きて、大切にされている様に見える僕に、当てつけの様に意地悪をする。
しかも狡猾。
時間差で殺しに来た。
この場にあの女がいたら無様な僕を嗤うだろう。
そもそも姉が僕の前に現れた時点で…あの男と一緒にいた時点で…。
『ああ私の可愛い弟、ありがとう保宇さん』
『いいんだよ。富士恵さんの頼みだからね。八重君。君も良かったじゃないか。生き別れのお姉さんに会えたんだから君も喜ぶと言い』
そう厭らしく嗤った醜い男が、富士恵の傍に居た時点で、断固として匡獅と関わらせるべきじゃなかったんだ。
ゴツゴツした金の指輪と宝石で縁取られた腕時計、オーダーメイドのスーツ、磨き上げられたブランド物の靴。
嫌味なぐらい見た目に財力を注ぎ込んだあの男は、ずっと前から匡獅の周りを、オオミカの血筋に自身を滑り込ませ様と必死だった。
僕は出来るだけ厄介そうな奴は、匡獅には近づけない様に幼い時から心を配っていたのに。



