過つは彼の性、許すは我の心 参



「凌久返事は?」

「んー楽しそう」


 妃帥は女に興味が無くなり、俺への返答もせず、窓辺に設置したらしい2人掛けの椅子に土師凌久と座りながら、携帯を覗き込んでいる。


「ふふ…楽しそうね」

「可愛いなあ」


 ヘラヘラと笑っている印象しか無い土師凌久が、面映ゆい物を見る目で自身の携帯を眺めていた。


「この写真は保存出来るの?」

「出来る」

「じゃあ後でお兄様の携帯に送って頂戴」

「ええけど…隣に、」

「いいのよ」


 妃帥もいつも以上に楽しそうで「何見ているんだ」と、鉄将も土師凌久の携帯を覗き込んだ。


「ここ…美術展か」

「ええそう」


 スワイプしている土師凌久の横で鉄将が時々「おお」とか「スゲエ」とかありきたりな感想を言っていた。

 察するに土師凌久の知り合いが美術展に行っているらしく、それを妃帥に見せているらしい。

 溜息を吐いて、女に捕まる前に自分の部屋に戻ろうとした。

 その瞬間、


「へえー唐堂楽しそうだな。この隣にいる奴は?」


 唐堂と言うワードに踵を返した足が止まる。

 しかも妃帥が、


「同じ中学出身の、今でも親しい付き合いしている別の学校の男性…だったかしら」


 意味ありげにそう言った。

 あの女や楽の声も止まり、静寂が部屋を支配する。

 口火を切ったのは、