横から覗く可愛らしい妃帥ちゃんに頬擦りしたいのを押さえながら答えた。
すると、
『良いわよ、行っても』
と簡単に私の悩みを一蹴した。
『え、でも…』
『何言っているの。別にその男と逢瀬する為に行く訳じゃないんでしょう?』
『も、勿論!』
『私だってそこまで狭量じゃないわ。可愛い私のミケのこんなお願いぐらい叶えたって何も困らないわ』
『妃帥ちゃん…!』
『でも連絡はしてね』
輝咲ちゃんと出会したその日、妃帥ちゃんの懐の大きさを見せ付けられて、結局スリスリしてしまった素敵な日な事を思い出す。(リヒト君とトイレに行って戻って来た輝咲ちゃんに不思議そうな顔をされたが)
携帯を持たない連絡手段として凌久君が抜擢され(凌久君には申し訳ないが)、傍に居る妃帥ちゃんと私のやり取りを手助けしてくれている。ありがとう凌久君。
凌久君随分昨日悩んだ様子だったから大丈夫かなって思ったけれど、時々凌久君と思われる内容のメッセージが挟まれるのを見るに元気そうなのが分かって安心した。
凌久君にも良いお土産買って行こう。
そう思いながら携帯を仕舞った私に坂本君が「良かった唐堂が楽しそうで。あの事を気にしているんじゃないかって思ってたから心配だったんけど、杞憂だったな」と言った。あの事?



