「私も。ギリシャ神話はポピュラーだよね」
金箔を混ぜながらスイーツをもぐもぐする。
「姉貴が唐堂が食べているデザートのモチーフになった絵画好きなんだよな」
「そうなんだ」
確か絵画のメインで描かれたダナエは王女様で、国の王の一人娘で、父王が自ら殺す誘因となるダナエの孫が誕生するのを恐れて、ダナエを閉じ込めたんだっけ。
それで、ゼウスは策を講じて“黄金の雨”に自身を変化させ、ダナエと交わり、後に怪物メドゥーサを倒し、アンドロメダを救い出す英雄ペルセウスを身籠るとかなんとか。
「神話って人が破滅するの多いよな、なんか」
ポツリと坂本君が呟く。
「そう?」
「姉貴がマジでギリシャ神話オタクで、あの酒の神」
「ディオニューソス?」
「そうそう。その神様の母親だって正妻に唆されて、ゼウスに見たままの姿で来て下さいってお願いして、本物の姿で会いに来たゼウスの光で焼け落ちたんだろ?他に牛に変えられたり、惚れられて花とか木とに変えられたり…良い事なくないか?」
言われて見れば確かにとも思うけれど…。
「ま、神様と人間じゃ種類が違うから高望みすんなって事なんだろうけど」
「うーん…」
しっくり来ていない私に「人は運命から、神からは逃げらんねーって。怖いな目を付けられた人間側は」と坂本君が言うが、何故だかずっとしっくり来ていない。



