腰が抜けそうになったのに無理矢理抱き締められているせいで、座り込む事が出来ない。
「八重、俺はお前が俺を見つめる目が好きなんだ」
「…」
「俺がミケを選んだ時、富士恵さんが傍に居た時、俺に子供が出来た時…お前、俺をどんな目で見ていたのか知っているか?」
聞きたくない。
匡獅は鼻歌を歌いそうな心地で、項垂れた腕の中の僕を見下ろしながら、カドリールを踊る様にくるくるとその場で回る。
生涯さらけださないと誓った秘密を踏み荒らされている衝撃が、心の中を支配してされるがままだった。
「八重と居ると所詮人なんだなあって思うんだ、俺も」
「…」
「一応俺も考えたんだ。ミケに選ぶなら俺と八重の事をとやかく言わなさそうで、ちゃんとお前とも相性が悪くないかもちゃんと考えて選んだ」
「…」
「上の子達が産まれた時は、お前の意識がそっちに取られている気がしててどうしようかなあと考えた。でも彼方が勝手に騒いだお陰でお前が関わる事も少なくなったから、俺はラッキーだと思った」
くるくる回る。
眩暈なのか、回されているせいでそうなっているだけなのか、判断が付かない。
「お前が外に意識が取られているなって思ったら、獅帥達を つくった。お前目に見えて可愛がるから、子供にまで嫉妬する事になったよ」



