その夜、満月が静かに都を照らす中、咲妃は喉の渇きで井戸へ向かった。

冷たい風に少し震えながら、水をくむ。

 「ふぅ…夜は寒いなぁ…」

 だが背後に、黒い影が忍び寄る。

咲妃は気づかずに水を飲み、顔を上げた瞬間――

 「きゃっ!」

 突然、背中に何かが絡みつき、身動きとれなくなった。

咲妃の心臓は飛び跳ね、恐怖で体が硬直する。

「だ、だれ…?!」

 ゆっくりと振り向くと、そこには不敵な笑みを浮かべる道満の姿があった。

 「ふふふ…やっと見つけた…。」

 咲妃は必死に逃れようとするが、道満の力は強い。心臓が早鐘のように打つ。

 「助けて…晴明さっ…ん!」

 咲妃の叫びは夜空に響いた。

 その声を聞き、晴明は屋敷から飛び出した。