晴明はさらに問いかける。


「名は?」

「東雲、咲妃……です。」


「何処から来た?」


「わ、私は……未来から来たんです! 家に帰らせてください!」


 咲妃の声に、周囲は騒ぎ出す。

 誰も信じない。けれど晴明は、落ち着いた声で制した。


「ははっ、頼もしい女子じゃ。気に入った。」

「咲妃とやら、ここは平安だ。察するに、そなたの言う住まいはないと思うがな?」


 そう言いながら、意地悪そうに笑い、縛られていた縄を取り払う。

 咲妃は、ほっと胸をなでおろしながら、内心で思った。

(何なの……歴史の本で見た晴明と、ちょっと違う……でも、優しい……?)