結由からの返事はなかった。


「流石に自己中すぎたかなぁ…」


 いつもよりゆっくり歩く帰り道。


「ちょっとそこのかわいいお嬢さん?」


 結由に嫌われたら、私友達いないや。

 友達いなくたって、きっと私は平気で生きていくけど、冗談を言った時笑ってくれる相手がいないのは寂しいと思う。


「貴方よ!!可愛い貴方!!!気づいて!!!!」


 きっと結由しか友達いないのは私だけで、結由にはたくさん友達いるんだろうな…
 
 んーー…もしかして私、結由の友人関係の邪魔になってたりするのかな?

 まあ、結由に邪魔って言われたらその時考えればいいか!


「ふなっしーTシャツの貴方よ!!!!話だけでも!!!!」


 ………ふなっしーTシャツ?


「うぇ!?わ、私!?!?!?!?どうかしましたか?」

「やっと気づいてくれたわね……気づいてくれてよかったわ」

「可愛い子、とか言ってたので私のことではないなって思って無視しちゃいました…ごめんなさい」

「この容姿で無自覚…もはや恐ろしいわね。
自己紹介がまだだったわね。私は谷田部 咲(やたべ さき)。芸能事務所Fleurir(フルリール)で所長をしているわ。」


「え、!!!!!Fleurirって、結由のいる!?!?所長って…どうしてどんな凄い人が私に?」

「私が声をかけた理由はただ一つ。

———貴方、Fleurirでアイドルにならない?

…私直々にスカウトすることは今まで一度もなかったのだけれど、貴方はあまりにも芸能界にいるべき人材。一目見てわかったわ。」

「Fleurirでアイドル…?」


 昔から、ありがたいことに芸能界に誘ってもらう機会が何度もあった。

 でも、結由が毎回猛反対してくるから、毎回丁重にお断りしている。