「あ、結由おかえりー!!!」

「なんでいんだよ…」


 とある二ヶ月前の土曜日。

 結由は土曜授業だったが、ゆるめの都立高校に通っている私は暇を持て余していた。

 そのため、結由のお母さんに許可をもらい、結由の部屋で漫画を読んでいた。

 それに、一年前にモデル活動を始めた結由とは、こうでもしないと会えないのだ。


「ごめんって!!うちらなかよしじゃん?」

「だからって人のベットに勝手に上がんな!!!!」

「シーツの皺は伸ばしてから帰るから大丈夫!!!」

「今ベットの上にいられんのが困るんだよ…!」

 
 結由は潔癖症じゃなかったはずだけど、嫌なものは嫌らしい。

 人によって不快に感じる物は違うし、本人の許可を得るべきだったな、と反省しながらベットから降りる。


「てか俺もう仕事だから。勝手に帰って。」


 あーあ。またこれだ。

 私の幼馴染は全てにおいてニジュウマルだ。

 運動もできて、頭もよくて、クールだから分かりづらいけど、コミュ力だってある。

 そんな幼馴染にある、唯一の不満。


「結由、今日はどこ行くの?」

「事務所。なんで?」

「んーーーーついてきたいから!!!」

「いっつもそんなこと言わないじゃん。なんかあった?」


 ————-もっと一緒にいる時間が増えればいいのになんて、我儘だもん。言いたくないよ。

でも、そんなに優しく聞かれたら、言っても許される気がしてしまう。


「あのさっ!!!私さっ!!!だからなんだって感じかもだけどさ、

結由が人気になって、なんか、なんというか、遠くなっちゃった、みたいな、思ったりとか…するよ?」

「……………あっそ。」

「あ!!だから結由になにかしてほしいとか、モデルやめてほしいとか、そういう訳じゃないから!!ほんと!」


…………………………………


 ち、沈黙がくるしい…

 やっぱり、こんなこと言わなきゃよかったなぁ。



「…じゃあ俺、事務所行ってくるから。」

「うぁ!!うん!!気をつけて!!!!ほんと!!!私もすぐ帰る!!!!」