声の主は、幼なじみ⋯⋯と言っても、単に小中学校でずっと同じクラスだっただけで、電話番号すら知らない、安保理(あんぼ・おさむ)だった。

小さい頃から、何かと私にちょっかいを出してくるので、仕返しに「アンポリ」とあだ名をつけてやり、それが学校中で定着してしまったのを、未だに怨んでいる模様。

田舎なので、こんな風に同級生との鉢合わせも頻繁で辟易する。

特に、私とアンポリは、お互いにマイカー通勤禁止の職場で、期せずして、職場も、借りている部屋も、すぐ近所だから尚更よく鉢合わせる。

「うるさいわねぇ⋯⋯あんたは世界の平和と安全だけ考えてなさいよ」

私が先に歩き出すと、アンポリもついてきた。

「南、まさかホントに結婚決まったのか?」

「結婚には興味ないよ。興味があるのはドレスだけ。四捨五入してギリギリ30歳の内に、ソロ結婚式をしようかなって」

「ぶっ飛んだ発想なのは相変わらずだねぇ」