もう一度、君の手を握る

 とにかく、この学校は広い。数カ月前まで通っていた高校よりも広い。
 テニスコートや野球部専用のグラウンドだけでなく、ハンドボールのコートまで用意されている。それに、弓道場や格技場まである。さすがに休憩しなければ、やっていられない。
 合唱部の合唱と吹奏楽部の演奏をBGMにして、学校をひととおり回った。
 生徒会館の一階にある食堂が空いていたので、空いている席に座った。自販機で俺はカロリーオフのコーラを、若林さんはスポーツドリンクを手にして休憩をしているところだ。

 ただ、案内してもらったからといって、運動部に入る気はない。いじめられたことの記憶が鮮明に思い出されるからだ。
 だからといって、今さら文化部に入るのも考えものだ。
 かといって、残り二年間の高校生活を勉強ばかりで過ごすわけにはいかない。昨日富沢先生が話していたっけ、「勉強だけじゃこの学校はやっていけないぞ」って。