もう一度、君の手を握る

 俺は決意を固めると、長テーブルに置いてあるペン立てからボールペンを取り、入部届に自分の名前を書く。

「これでどうだ」

 もう、迷いはない。
 幼なじみに裏切られ、いじめられ、家族とともにこの街に逃れた俺だ。
 俺を陥れた人間に報復をして青春を取り戻すよりは、この街で青春を一からやり直そう。

「ありがとう、智也。これからよろしくね」
「こちらこそ」

 俺は昨日と同じように若林さんの手を握る。若林さんの右手には、確かなぬくもりがある。
 どんなことがあっても、俺は若林さんと一緒に頑張れる。夕闇迫る校舎で、俺は彼女への思いを刻み込んだ。