もう一度、君の手を握る

「よろしい。それじゃあ、ちゃんと見ていてね! ……ゴー! ファイ! ウィン! ゴー! ファイ! ウィン! ゴー! ファイ! トモヤ! ゴー! ファイ! ウィーン!」

 若林さんがエールに合わせて足を振り上げる。
 幼なじみのぎこちないエールに比べると情熱的で、声が部屋いっぱいに響き渡る。

「どうかな、智也。元気になったかな」

 それからひととおり踊り終えると、眩しい笑顔を見せる。
 次の瞬間、俺の心は……。

 なんだ……?
 ……胸が熱い。心臓が早く脈打っている。どういうわけか呼吸が荒くなっている。
 変わったのはそれだけではない。ぼんやりとしていた若林さんの姿がはっきりと見える。

 意志の強そうな丸くて大きな瞳とそれをふちどるまつげ、整った目鼻立ち、桜桃色の唇にくびれのところまである長くてさらさらとした黒い髪。
 出るところは出て、引っ込んでいるところは引っ込んでいる体つき。
 女性としては背丈が大きく、俺と並んで歩いても目線が合いそうだ。
 踊ったせいもあって、衣装にはほんのり汗がしみついている。