もう一度、君の手を握る

「なんだよ。俺は誰も信用できないし、どうにでもならないんだよ」

 若林さんがなんと言おうと、俺は顔を背ける。

「そんなことは言わないでよ、智也」
「なんだよ、俺のことを気安く呼ぶんじゃないよ」

 また顔を横に向けようとしても、若林さんは顔を寄せる。何度も避けようとしても、俺の顔を見つめようとする。

「つらそうな顔をしているのね。私ね、あなたの気持ちがよくわかるわ」
「どういうことだよ」
「いいから、黙って聞いて」

 そう話すと、若林さんはパイプ椅子を引っ張ってきて俺の隣に座る。

(何かを話したがっているな。不信がってないで、ここは彼女の話を黙って聞こう)

 俺は何も口を挟まずに、若林さんの話に耳を傾ける。
 若林さんは俺が何も言わなくなると、ゆっくりと口を開く。