もう一度、君の手を握る

「若林さんの思っていたとおりさ。あまり言いたくはないけど、今でも思い出すと……」
「つらいの?」
「そうさ。誰も信用できなくなったんだよ、俺は。今さら応援なんてされても……」

 また若林さんの前で俺は弱音を吐く。
 応援なんてしてもらっても、どうにもならない。それは俺が一番よくわかっている。

 俺を応援していた幼なじみは俺のそばを離れ、イケメンでずるがしこい部長に喜んで抱かれた。
 そして、そのイケメンに騙されて俺を罠にはめた。
 俺を応援していた幼なじみにはしごを外され、俺は奈落の底へと落ちた。

「智也……」

 甘いシトラスの香りが鼻をくすぐる。だけど、構うものか。
 女なんて信用できない。幼なじみを奪われ、いじめられたんだ。だから、なおさら……。