もう一度、君の手を握る

「智也、こっちを向いてもいいわ」

 窓際から景色を眺めていると、若林さんの声が耳元に入ってくる。
 布同士の擦れる音がずっと聞こえていたから、いったい何をしていたのか気になっていた。

(見ても……いいんだな)

 何度も深呼吸をしてから若林さんの声が聞こえた方向に体を向ける。

(ええい、ままよ)

 心の赴くままに若林さんの姿を眺める。
 すると、そこには――。

「どうかしら。去年の文化祭などで着たユニフォームだけど……」

 制服姿とは全く違う大胆な格好をした若林さんがそこに立っていた。
 赤を基調とした袖のないシャツに丈の短いスカート、それと口元を抑えているポンポン――。
 まずい、まともに顔を見られない。

「どうしたの、智也」
「……い、いや、何でもない」

 俺は視線を本棚へと反らす。
 あの一件から女性に対して不信感を抱いているのに、どうして俺のジュニアは正直に反応しているのだろうか。
 ひょっとして俺は未練を抱いているのだろうか。部長に抱かれた幼なじみのことを――。