「あははははは! 馬鹿すぎー! 」

基地に戻りウリュウに潜入の報告すると、彼は腹を抱えて大笑いする。

「そ……そんなに笑わなくても……」

「笑ってんじゃないよ、怒ってんの。真理愛って全然潜入の才能ないね、
しかも緑川に会えなかったとかマジ?」

「……緑川さんは登校していなくて……」

「あっそう、病気でもしたのかなー?って言うのを調べる為に潜入させたのに、こんだけ問題起こせるって奇跡だよ」

「申し訳ありません、俺が止めなかったからです」

「ち、違うの! 私が突っ走ったせい…!この件からは降りる、責任も取るわ! 本当にごめんなさい! 」

「……いや、このまま行こう」

「はい!? 」

「今日の真理愛のムーブを見てこいつスパイだなって思う奴いそう? 」

「あ……いや」

(いないな……俺がもし他人だったら何やってんだってドン引きするレベルにやらかしている……! )

ナギが私を見つめて何か考え込む。
何か失礼なことを考えていそうな顔だ、私が悪いのだが……。

「そういうこと! それにこの黄瀬って子、結構有望なヒーロー候補らしいよ。
恩売っておいて損は無いでしょ、あっちで未来が無いのが解ったらこっちに引きずり込めるかもだし。」

「じゃあ……明日も双星に行っていいんですか!? 」

「いいよ、もう目立たないでね」

「やったー! ウリュウ様ありがとうございます! 」

私が喜ぶ一方で、ナギはため息を吐きながら頭を抱えた。
(リリアに目立つなって指令は意味無いよ……わざと言ってるな、ウリュウ様)

ーーーー

「はー……ちょっと幼いホワイトとブラックと絡みが見れたし、イエローは嫌な奴にしても……レッドは想像より可愛かったなー。
あとはもうちょっと原作通りにホワイトとブラックが仲良くしてくれたら完璧なのに」

私はベッドの上で推し日記をしたためながら独り言を呟く。

「ブラックとホワイトって誰ですか? 」

「ブラックとホワイトは後から入る……んん!? 」

急に天井の方から声がして上を向くと、
そこにはベッドの天蓋にぶら下がり無邪気な笑みを浮かべたホワイトがいた。

「ホワイト……じゃない! えっと……」

「あ! 俺の名前名乗るの忘れてました! 
俺は真白冬樹(ましろふゆき)です! さっきぶりですね! 」

「さっきぶりですね! じゃないわよ! あ、貴方どうやってここに……」

「着いてきちゃいました! 」

来てしまったのなら仕方がないか、しかし、全く尾行されていることに気付けなかった。
私はともかくナギまで欺くとは流石ホワイトである。

「俺、何かこういう建物とか潜入するの得意で…壁とかに溶け込めるからかな」

確かに彼は肌も髪も白いし、建物では見えにくい。
アニメで見ていた様子だと運動神経も高かったし、密偵の才能があるのかもしれない。

意外な才能を見出してしまった!……なんて言ってる場合じゃないか。

「あなた分かってるの?ここは敵地…!
ブラックホール団のアジトなのよ!」

「知ってますよ!
前から思ってたけど名前そこそこダサいですよね」

アニメ放映時から散々言われてきたことだが、みなまで言わないで欲しい。
画面越しの傍観者だった時は笑顔で同意できたが、団員になった今その指摘は耳が痛い。

「そう……ははは! なかなかやるじゃないあなた! 
流石はホワイトになる男! 私の怪しさを見抜いてここまで追って来たって訳!いいわ、ここで戦ってあげる! 覚悟し……」

「あ、全然違いますね」

「ほあ!? 」

「俺、リリア様に言ったでしょ? 『一緒にいてもいいですか? 』って!
いいって言われたから付いて来ただけです! そしたらスパイだったみたいで俺もびっくりしました。」

一緒にいていいですか……? もしかして授業の時のあれか? 
私は授業中一緒にいてもいいという意味合いで返事をしたはずなのだが。

「……あなたストーカーじゃない! 」

「スパイにストーカー呼ばわりされたくないですよぉ~! あとこれリリア様の悪い癖です、自分より強い相手に簡単に挑もうとしちゃダメですよ 」

彼は天蓋から降りると、私に歩み寄り頬に少し触れる。

「でも俺、リリア様のそういうところ大好きです! 」

「私たちは敵同士なのよ……? 」

「いーえ! 敵じゃありません! 今日から同じ仲間ですよ。
俺、今日からブラックホール団に入ります! 」

は……

は………?

はああああ!?

転生してから約1週間とちょっと……推しの1人が闇堕ちしそうだ。