「リリア! 目立つなって言ったよね! 」
空き教室にナギの怒号が響く。
「あー、うるさいわね! 人助けしたんだからいいじゃない、何が悪いのよ! 」
「頼むよ……もう少し振る舞いには気をつけて、本気で心配してるんだ。」
ナギが真剣な顔で言う。
「……ご、ごめんなさい。」
「それにしてもリリア様、能力の使い方だけは凄い上手いですよね。
一瞬でレッド先生の炎を打ち消す程の氷が出せるなんて。」
だけは、は余計だ……リリアは言わば、RPGで言うところの魔法使い。
打たれ弱くて力が無い代わりに魔力や魔法攻撃力とかが高い、後方支援タイプだ。
アニメでも戦闘員を使って壁にしていたのはそういった都合なのだろう。
「そんで? そこの金髪は反省したの? 」
ナギが言うと、金髪坊主はムスッとしたままそっぽを向き
「反省する程悪い事をした覚えがないね」
と言う。
「もー、ゆかり君駄目じゃないですか! リリア様に首を繋いで貰ったのにそんな言い方! 」
「うるさいな! お前には関係ないだろ! 」
「あなた達、今朝もそんな感じで言い合ってたけど……何でそんなに仲が悪いのよ。」
「それは……俺が……弱いから……」
いつも声の大きいホワイトが、消え入りそうな声で言う。
「チッ、お前を見てるとイライラするんだ! そうやっていつも……俺って弱い奴なんです、憐れんでくださいって顔して……!
本当はそんなんじゃ無いくせに!」
「ちょっと、やめなさいよ」
私はホワイトに掴み掛かろうとする金髪坊主を制止する。
ホワイトはレッドの授業にも耐えていたし、体力で言ったら上澄みのように思えたが……
それにホワイトの能力はアニメで見て知っているが、能力だけで言えば彼はむしろチートクラス、そんなに弱い訳……
「もういい、今日は帰る」
私に止められた金髪坊主は、そう言って空き教室を出ていこうとする。
「まって! 明日もちゃんと来なさいよ!」
「…君、何だっけ。」
「はい?」
「名前だよ」
「リリア……須藤リリアよ。」
「リリアね、今日は助かった、ありがとう……じゃあな。」
金髪坊主はそのまま教室を出た。
ありがとう……? あのイキり金髪がありがとうと言ったのか!?
「素直じゃないんですよねー」
ホワイトが呟く。
「あいつ、何であんなにイキってるの?
まるで強い振りしないといけないって強迫観念に駆られてるみたい」
私が尋ねると、ホワイトは俯きながら口を開く。
「それはよく解らないですけど……俺に強く当たる理由なら何となく察してます、ヒーローを諦めて欲しいんです。
俺に才能が無いから……失望して……それで」
「元々二人は知り合いだったのかしら? 」
「はい! 昔はとっても仲良しでした! でもここに来てから俺、すっごいでっかい怪我しちゃって……
それからです、ゆかり君があんな態度を取るようになったのは。」
「ふーん、そんなんで壊れるなんて脆い友情だな。」
肩を落としながら言うホワイトにナギが冷たく言い放つ。
「ちょっとナギ……! 」
「だってそうでしょ? 俺だったらリリアが弱いからって失望したりしない。
元々そんなに親しい仲じゃなかったんじゃないの。」
「そうだといいですね」
「何だよその妙な返し……! 」
「俺もそろそろ帰らないと! リリア様、ナギ君、また明日! 」
ホワイトはそう言うと元気に手を振りながら教室を後にした。
「おい、ナギ君はやめろ! ああもう、いないし! 」
「私達も帰らないとね……ナギ、ウリュウ様への報告どうしよう……」
「そのまま報告するしかないでしょ。
怒られはしないだろうけど、陰湿な嫌がらせされそうだね……」
「嫌すぎる―! ……あれ」
向かいの教室……保健室にレッドが入っていく所が目に入る。
あの腕、ボロボロだったし包帯を巻きに行くのだろうか?
レッド、あまり包帯が上手に巻けていなかったな……
ヒーローなら日常的に怪我をするだろうし、手当の仕方くらい教えてあげなければ!
「どうかした? 」
「さっきレッドが保健室に入っていくのが見えたの。」
「見てなかった……まさか話しかけに行く気?
ねえリリア、ヒーローが好きなのは解ってるんだけどこれは仕事で」
「解ってる! でもちょっとだけ待ってて! 」
「……はあ」
ブラックは呆れたように深いため息を吐いた。
ーーー
「今日はまだ……浅い方かな」
レッドが保健室で呟く。
「ねえ」
「うわ!? 」
私が声を掛けるとレッドは薬を落としそうになる程驚いていた。
「やっぱり火傷してた!見せて」
「ちょっと……何なのいきなり出てきて……! 」
「さっき偶然こそこそ保健室に入ってくのが見えたのよ。」
私はレッドの腕を見る、その腕には先程出来たであろう生々しい傷や、過去に出来たであろう深いやけどの跡が刻まれていた。
「痛そう……ねえ、能力使う度にこんなことになってるの? 」
「俺の能力は火力が高すぎて……制御が効かないんだ。」
アニメでは問題無く能力を使えていたのに……
そういえば、レッドは夏でも長袖で顔も全く出てきたことが無かった。
まさか……火傷のせいで?
いや、そんな恐ろしい理由な訳がない。
レッド本人が「正体不明でこそヒーローだ」と言っていたくらいだ、それ以上の理由なんか無い……筈。
「平和のために能力を使うのは当然のことだから! 君が気にするよなことは何も……」
「今そう言う話って聞きたくないわ、座って。」
「……はい」
私が言うとレッドは大人しく席に着く。
火傷に効く薬を塗ると、彼の顔が少し和らいだように見えた。
「私ね、前s……前の学校で保健委員だったの。
それに妹がよく怪我するからその度に手当てしてて……こういうの結構得意よ。ほら!包帯も完璧!それにこれも!」
私は包帯の上に優しく手を触れる。
「私の手、ちょっと冷たく出来るんだ……使用人の子が熱で休んだ時、いけるかも!って試したら本当に冷えピトみたいになって結構好評だったのよ! どうかしら。」
「……痛くない」
「でしょー! 良かった! 」
「君って変な人だね……
こんなことしなくたって今日の事で内申点下げたりしないのに」
「は? 何のこと? 私はあなたの腕の火傷が気になって来てみただけよ。
だってこんな大きい火傷、適切な処置しなきゃ悪化するじゃない!次から今日私が行った処置を真似すること、解った? 」
「……俺はヒーローだからこんなの平気。手当してくれてありがとう、名前なんだっけ?」
「名乗る程のもんじゃないわにゃ」
私が言い切る前にレッドに頬を抓られる。
「……須藤リリア……」
その顔を見てレッドは少しだけ「ふふっ」と無邪気に笑う。
あ……初めて年相応の笑顔が見れたような……
「リリア、俺の授業に最後までついて行きたいなら時間外も運動して体力付けないときついと思う、じゃあね」
レッドはまた無表情に戻りそれだけ言うと、保健室を出ていってしまった。
……怪我をすると恥ずかしいお年頃なのだろうか?
「リリア! 」
窓の外からナギの声が響く。
「うわ! ずっと窓の外で聞いてたの!? アサシンみたいでかっこいいわね! 」
「言ってる場合か! 何でいちいち目立つことするんだよ君は……!
ウリュウ様に怒られても庇ってあげないからな! 」
まずい、報告のことを忘れていた……!
空き教室にナギの怒号が響く。
「あー、うるさいわね! 人助けしたんだからいいじゃない、何が悪いのよ! 」
「頼むよ……もう少し振る舞いには気をつけて、本気で心配してるんだ。」
ナギが真剣な顔で言う。
「……ご、ごめんなさい。」
「それにしてもリリア様、能力の使い方だけは凄い上手いですよね。
一瞬でレッド先生の炎を打ち消す程の氷が出せるなんて。」
だけは、は余計だ……リリアは言わば、RPGで言うところの魔法使い。
打たれ弱くて力が無い代わりに魔力や魔法攻撃力とかが高い、後方支援タイプだ。
アニメでも戦闘員を使って壁にしていたのはそういった都合なのだろう。
「そんで? そこの金髪は反省したの? 」
ナギが言うと、金髪坊主はムスッとしたままそっぽを向き
「反省する程悪い事をした覚えがないね」
と言う。
「もー、ゆかり君駄目じゃないですか! リリア様に首を繋いで貰ったのにそんな言い方! 」
「うるさいな! お前には関係ないだろ! 」
「あなた達、今朝もそんな感じで言い合ってたけど……何でそんなに仲が悪いのよ。」
「それは……俺が……弱いから……」
いつも声の大きいホワイトが、消え入りそうな声で言う。
「チッ、お前を見てるとイライラするんだ! そうやっていつも……俺って弱い奴なんです、憐れんでくださいって顔して……!
本当はそんなんじゃ無いくせに!」
「ちょっと、やめなさいよ」
私はホワイトに掴み掛かろうとする金髪坊主を制止する。
ホワイトはレッドの授業にも耐えていたし、体力で言ったら上澄みのように思えたが……
それにホワイトの能力はアニメで見て知っているが、能力だけで言えば彼はむしろチートクラス、そんなに弱い訳……
「もういい、今日は帰る」
私に止められた金髪坊主は、そう言って空き教室を出ていこうとする。
「まって! 明日もちゃんと来なさいよ!」
「…君、何だっけ。」
「はい?」
「名前だよ」
「リリア……須藤リリアよ。」
「リリアね、今日は助かった、ありがとう……じゃあな。」
金髪坊主はそのまま教室を出た。
ありがとう……? あのイキり金髪がありがとうと言ったのか!?
「素直じゃないんですよねー」
ホワイトが呟く。
「あいつ、何であんなにイキってるの?
まるで強い振りしないといけないって強迫観念に駆られてるみたい」
私が尋ねると、ホワイトは俯きながら口を開く。
「それはよく解らないですけど……俺に強く当たる理由なら何となく察してます、ヒーローを諦めて欲しいんです。
俺に才能が無いから……失望して……それで」
「元々二人は知り合いだったのかしら? 」
「はい! 昔はとっても仲良しでした! でもここに来てから俺、すっごいでっかい怪我しちゃって……
それからです、ゆかり君があんな態度を取るようになったのは。」
「ふーん、そんなんで壊れるなんて脆い友情だな。」
肩を落としながら言うホワイトにナギが冷たく言い放つ。
「ちょっとナギ……! 」
「だってそうでしょ? 俺だったらリリアが弱いからって失望したりしない。
元々そんなに親しい仲じゃなかったんじゃないの。」
「そうだといいですね」
「何だよその妙な返し……! 」
「俺もそろそろ帰らないと! リリア様、ナギ君、また明日! 」
ホワイトはそう言うと元気に手を振りながら教室を後にした。
「おい、ナギ君はやめろ! ああもう、いないし! 」
「私達も帰らないとね……ナギ、ウリュウ様への報告どうしよう……」
「そのまま報告するしかないでしょ。
怒られはしないだろうけど、陰湿な嫌がらせされそうだね……」
「嫌すぎる―! ……あれ」
向かいの教室……保健室にレッドが入っていく所が目に入る。
あの腕、ボロボロだったし包帯を巻きに行くのだろうか?
レッド、あまり包帯が上手に巻けていなかったな……
ヒーローなら日常的に怪我をするだろうし、手当の仕方くらい教えてあげなければ!
「どうかした? 」
「さっきレッドが保健室に入っていくのが見えたの。」
「見てなかった……まさか話しかけに行く気?
ねえリリア、ヒーローが好きなのは解ってるんだけどこれは仕事で」
「解ってる! でもちょっとだけ待ってて! 」
「……はあ」
ブラックは呆れたように深いため息を吐いた。
ーーー
「今日はまだ……浅い方かな」
レッドが保健室で呟く。
「ねえ」
「うわ!? 」
私が声を掛けるとレッドは薬を落としそうになる程驚いていた。
「やっぱり火傷してた!見せて」
「ちょっと……何なのいきなり出てきて……! 」
「さっき偶然こそこそ保健室に入ってくのが見えたのよ。」
私はレッドの腕を見る、その腕には先程出来たであろう生々しい傷や、過去に出来たであろう深いやけどの跡が刻まれていた。
「痛そう……ねえ、能力使う度にこんなことになってるの? 」
「俺の能力は火力が高すぎて……制御が効かないんだ。」
アニメでは問題無く能力を使えていたのに……
そういえば、レッドは夏でも長袖で顔も全く出てきたことが無かった。
まさか……火傷のせいで?
いや、そんな恐ろしい理由な訳がない。
レッド本人が「正体不明でこそヒーローだ」と言っていたくらいだ、それ以上の理由なんか無い……筈。
「平和のために能力を使うのは当然のことだから! 君が気にするよなことは何も……」
「今そう言う話って聞きたくないわ、座って。」
「……はい」
私が言うとレッドは大人しく席に着く。
火傷に効く薬を塗ると、彼の顔が少し和らいだように見えた。
「私ね、前s……前の学校で保健委員だったの。
それに妹がよく怪我するからその度に手当てしてて……こういうの結構得意よ。ほら!包帯も完璧!それにこれも!」
私は包帯の上に優しく手を触れる。
「私の手、ちょっと冷たく出来るんだ……使用人の子が熱で休んだ時、いけるかも!って試したら本当に冷えピトみたいになって結構好評だったのよ! どうかしら。」
「……痛くない」
「でしょー! 良かった! 」
「君って変な人だね……
こんなことしなくたって今日の事で内申点下げたりしないのに」
「は? 何のこと? 私はあなたの腕の火傷が気になって来てみただけよ。
だってこんな大きい火傷、適切な処置しなきゃ悪化するじゃない!次から今日私が行った処置を真似すること、解った? 」
「……俺はヒーローだからこんなの平気。手当してくれてありがとう、名前なんだっけ?」
「名乗る程のもんじゃないわにゃ」
私が言い切る前にレッドに頬を抓られる。
「……須藤リリア……」
その顔を見てレッドは少しだけ「ふふっ」と無邪気に笑う。
あ……初めて年相応の笑顔が見れたような……
「リリア、俺の授業に最後までついて行きたいなら時間外も運動して体力付けないときついと思う、じゃあね」
レッドはまた無表情に戻りそれだけ言うと、保健室を出ていってしまった。
……怪我をすると恥ずかしいお年頃なのだろうか?
「リリア! 」
窓の外からナギの声が響く。
「うわ! ずっと窓の外で聞いてたの!? アサシンみたいでかっこいいわね! 」
「言ってる場合か! 何でいちいち目立つことするんだよ君は……!
ウリュウ様に怒られても庇ってあげないからな! 」
まずい、報告のことを忘れていた……!
