大原さんはまた別の仕事があるみたいで、いつも通り、家の前で降ろしてもらう。

車のドアを開けてもらって、また明日って言って、家に帰る。

玄関を開けると、家ではありえない声が響いて聞こえた気がして、心臓まで固まる。

「…え?」
いやいや、絶対空耳。

ずかずかとリビングに突き進むと、ドア越しに楽しげな声が聞こえた。

ただいま、と言いづらい人だ。

婚約者の、誰だっけ。