魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】

そうして、私だけに聞こえるように囁いた。

「ユリア様。
神様って、彼を10倍くらい気障にした男なんですよ。
いつかお会いしたときに、失礼のないようにしてくださいね」

うーん、神様にいつか会う日が来るとも思えないんだけど。

私は肩を竦めて曖昧に笑った。

っていうのも、エイイチロウの表情が思った以上に真剣だったから。
正面きって否定するのが失礼なくらいに、彼は真顔だったのだ。

もしかしたら、そういう宗教があるのかもしれない。
と、私は思う。

悪魔には宗教なんてないだろうという思い込みは、失礼なのかもしれないわ。
いつぞや、ベネチアに行ったときはキョウ、教会の中に入っても何の問題もなさそうだったし。
その上、クリスマスまで楽しむって行ってるんだから、やはり、意外とキリスト教徒なのかもしれない。

さっきのエイイチロウの発言とは若干矛盾もあるけれど、私はそれを気にしないことにした。

だいたい、悪魔の話の瑣末までいちいち気にしていたら全く話が進まない。
とりあえず、気になることを聞いておかないと。

ソファに座って、エイイチロウの瞳を見た。
柔らかいブラウンのその瞳は、とても悪魔のものとは思えないくらいに優しく煌いている。

「私が二十歳までに転魔しなかったら、その。
どうなるの?」

エイイチロウはすっかり氷が解けて薄くなってウイスキーを一口飲んだ。

ドキリ。

なんだか、答えを聞くのが少し怖い。