魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】

もちろん、そう都合良く彼の客が来てくれるはずもない。

私は肩に回された手を振り払うことも出来ず、ひたすらエイイチロウが戻って来ることを祈っていた。

「そんなにアイツがいいわけ?」

私が名前を答えないので、彼は不服そうにそう言った。

「そういうわけじゃないんだけど。
ほら、エイイチロウさんの紹介で来たから」

くすり、と、咲夜が笑う。
どうも、自分が優位であると信じて疑わない笑い方が気に障った。
長い脚を優雅に組み替えてみせる様すら。

「そんなこと気にしなくていいのに。
初回のお客様は、指名ホストの確定なんてしなくていいんだから」

馴れ馴れしく私の髪を撫でるその手にも苛々した。

「お待たせ、ユ」

私はエイイチロウの姿を見ると、咲夜の手を振り払って立ち上がった。

「待ったわー、エイちゃん☆」

軽い女の子のつもりはなかったが、軽い女の子を演じることならいくらでもできる。
ふわっとエイイチロウに寄り添うように抱きつく。

「そんなに淋しかった?」

慣れた言葉に、こくりと大げさに頷いて見せた。

咲夜は何も見なかったかのように席を立って行く。

「ねぇ、あの、気障な男なんて抜いちゃえばいいじゃん」

私は背伸びしてエイイチロウの形の良い耳に囁く。
それを聞いてエイイチロウは破顔した。

本当、忠実な犬を思わせるその顔には笑顔が良く似合う。