「ユリアちゃん♪」
背中から、優しさを声音に変えたような綿菓子を思わせる声がする。
私は仕方なく振り向いた。
うっとりしている綾香を置いて、ジャックがすぐ近くに来た。
相変わらず、今にも空中に溶けてしまいそうなほど、儚い笑みをその唇に乗せている。
「僕、彼女と出かけて来ても良い?」
わざわざそんなこと聞かなくても、って思うんだけど。
そっか。
彼は今、私の飼い猫だから仕方がないのかしら。
「もちろんよ。そのまま彼女と暮らしても構わないわ」
「大丈夫?
ねぇ、キョウさんが居ない間にユリアちゃんに何かあったら困るんだけど」
えーっと。
猫に守られなきゃいけないくらい頼りないですかね、私って。
「大丈夫よ。
この人、キョウの部下ですもの」
私はジュノを指差して笑って見せた。
ジュノは、中世の騎士よろしく丁寧なお辞儀をする。
「そっか。
良かった。じゃあ、またね。ユリアちゃん」
バイバイ、と。
ジャックが私に手を振った。
「またね、ジャック」
私は、無意識のうちに。
再開できるよう、深い深い願いを、短い三文字へと託していた。
それにしても恋は盲目といいますか。
綾香の瞳に私の姿は見えてないようで、それだけは幸いだった。
この状況、説明するもの言い訳するのも、かなり面倒なんですもの。
背中から、優しさを声音に変えたような綿菓子を思わせる声がする。
私は仕方なく振り向いた。
うっとりしている綾香を置いて、ジャックがすぐ近くに来た。
相変わらず、今にも空中に溶けてしまいそうなほど、儚い笑みをその唇に乗せている。
「僕、彼女と出かけて来ても良い?」
わざわざそんなこと聞かなくても、って思うんだけど。
そっか。
彼は今、私の飼い猫だから仕方がないのかしら。
「もちろんよ。そのまま彼女と暮らしても構わないわ」
「大丈夫?
ねぇ、キョウさんが居ない間にユリアちゃんに何かあったら困るんだけど」
えーっと。
猫に守られなきゃいけないくらい頼りないですかね、私って。
「大丈夫よ。
この人、キョウの部下ですもの」
私はジュノを指差して笑って見せた。
ジュノは、中世の騎士よろしく丁寧なお辞儀をする。
「そっか。
良かった。じゃあ、またね。ユリアちゃん」
バイバイ、と。
ジャックが私に手を振った。
「またね、ジャック」
私は、無意識のうちに。
再開できるよう、深い深い願いを、短い三文字へと託していた。
それにしても恋は盲目といいますか。
綾香の瞳に私の姿は見えてないようで、それだけは幸いだった。
この状況、説明するもの言い訳するのも、かなり面倒なんですもの。


