魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】

昨日とは打って変わって静かな部屋で、私は一人ボサノバを聞いていた。
定番のクリスマスミュージックを、全てボサノバでアレンジしたというCDは、聴いているだけで心が安らぐ。

うーん。
私、女子高生だし。
別に、心安らぐような音楽に耳を傾けなくてもいいんじゃない?
もっとさぁ、血、沸きあがるようなロックを聴いて騒ぎまくってもいいんじゃない?

って、自分で自分にダメだししたい気もするけど。

ロックアレンジされたクリスマスミュージックなんて持ってないから仕方がない。
……っていうことにしておいてもらいたい。


ピンポーン

気持ちが安らいでいると、呼び鈴の音まで柔らかく聞こえるから不思議なものだ。

やってきたジュノを出迎えて、コーヒーを入れる。

くんくん、と、警察犬よろしくジュノが匂いを嗅いでいる。

「何?このコーヒー豆の産地でもあてるつもり?」

私が笑うと、ジュノは珍しく真面目な顔で首を横に振った。

「何か、魔界の空気を感じて」

わざわざ言葉にするくらいだから、キョウのことではないだろう。

「うん……私、昨日吸血鬼と猫のハーフを拾っちゃったの」

私はコーヒーを一口飲んで、そう答えた。

「そいつ、後21日で終わりだね」

年末までのカウントダウンをするような気軽さで、ジュノが言った。