授業が終わった私は、真っ直ぐマンションへと向かう。
そういえば、ママにケータイの件交渉に行かないといけなかったんだっけ、って思い出したのは、もう、玄関の中に入った後だった。
「ただいま」
挨拶はもう、習慣だ。
「おかえりなさい、ユリアちゃん」
私に声をかけてくれたのは、綾香が言うところの「気品のある吸血鬼」。
ソファに座ったまま、眩しい笑顔を送ってくれる。
きちんと黒いパンツに白いフリルのついたシャツを着ていた。
が、裸でないことに安堵を覚えた私は、それを不思議とは感じなかった。
それに、その夜会服は彼にとてもよく似合っている。
「ただいま……えーっと。
なんて呼んだらいいかしら」
「そうだなー。
日本ではよく、クロって言われていたけれど」
そ、そうね。
黒猫を見かけた日本人なら、そう呼ぶかもしれないわ。
でも、気品溢れる王子様風のナイスガイに「クロ」とはさすがに呼びづらいのですが……。
口篭っている私に、ふわりと笑いかけてくれる。
「アメリカではJack、って言われてた」
「じゃあ、ジャックで、いい?」
「いいよ」
「キョウは?」
「キョウさんは、お仕事があるって出かけちゃった。
風に乗ってふわっとどこかにね。
そうそう、夕食は冷蔵庫に入れておくって言ってたから、遅くなるんじゃないかなぁ?」
「そっか」
居なければ居ないで、なんとなく淋しい風が心を吹き抜けていく。
私も、案外天邪鬼、なのかもしれない。
そういえば、ママにケータイの件交渉に行かないといけなかったんだっけ、って思い出したのは、もう、玄関の中に入った後だった。
「ただいま」
挨拶はもう、習慣だ。
「おかえりなさい、ユリアちゃん」
私に声をかけてくれたのは、綾香が言うところの「気品のある吸血鬼」。
ソファに座ったまま、眩しい笑顔を送ってくれる。
きちんと黒いパンツに白いフリルのついたシャツを着ていた。
が、裸でないことに安堵を覚えた私は、それを不思議とは感じなかった。
それに、その夜会服は彼にとてもよく似合っている。
「ただいま……えーっと。
なんて呼んだらいいかしら」
「そうだなー。
日本ではよく、クロって言われていたけれど」
そ、そうね。
黒猫を見かけた日本人なら、そう呼ぶかもしれないわ。
でも、気品溢れる王子様風のナイスガイに「クロ」とはさすがに呼びづらいのですが……。
口篭っている私に、ふわりと笑いかけてくれる。
「アメリカではJack、って言われてた」
「じゃあ、ジャックで、いい?」
「いいよ」
「キョウは?」
「キョウさんは、お仕事があるって出かけちゃった。
風に乗ってふわっとどこかにね。
そうそう、夕食は冷蔵庫に入れておくって言ってたから、遅くなるんじゃないかなぁ?」
「そっか」
居なければ居ないで、なんとなく淋しい風が心を吹き抜けていく。
私も、案外天邪鬼、なのかもしれない。


