家を一歩出れば、私も普通の女子高生。
も、もちろん家の中でだって気持ちだけは普通の女子高生なんだけど。

と、ともかく。
皆の流れに沿って、学校へと向かう。

その、制服だらけの人の波の中で、細身のブルージーンズに薄手のセーターという男を見つけた。
寒くないのかしら、と、コートを着ている私の目がそれにひきつけられたのもなんら自然な流れだ。

その人は、甘いマスクでにこやかに笑いながら、セーラー服を着た女性と一緒に歩いている。

その、あまりにも爽やかな笑顔に私は思わず釘付けになった。

だって、彼。
私をこの春ナンパして、魔王様に引き合わせた男。

そう、キョウの忠実なる僕、悪魔のジュノ(これもあくまで通称ですが)なんだもの。



彼が人間界で過ごしていることは知っている。
っていうのも、私たちの為に、正確にはキョウに命じられて、彼はこの近くでホストとして働いてくれているのだ。

私たちの生活費を稼ぐために。
もっとも、正確には私の生活費は父親から貰ったお金を使えばいいのだけれど、キョウはそれに手をつけない。
なので、学費は父親、それ以外の生活費は全てジュノが提供してくれているのだ。

もちろん、魔界において、一国の王であるキョウはとてもお金持ちであり、生活費に困るようなことはない。

しかし、人間界でそれを使うわけにはいかない。世界が違えば、貨幣価値も異なるし、この二つの世界には生憎為替レートなどというものも存在しないのだ。

つまり、キョウが人間界で使うお金はあくまでも人間界で稼いだもの。
今までもそれなりにお金は手に入れてきたようなんだけど。

貯金を食いつぶすより、きちんと稼いだほうが安心だ……っていう考えに基づくもの、らしい。
相変わらず、変なところ『だけ』きっちりしているのが悪魔流だ。

ジュノはキョウに命じられれば人攫いから皿洗いまで何でもやる、忠実な部下なので特に異存はないようだった。