魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】

お風呂に浸かっていると、少しずつ血が巡ってきた。
いや、頭に昇っていた血が、全身にゆっくり巡っていくと言ったほうが正確なのかもしれない。

本当は、分かっているの。

昨夜、私がテーブルで気を失った後、キョウが全て片付けてくれたんだろうなってこととか。私のことも、洗うか拭くかしてくれたんだろうな、とか。

それに関しては、感謝してるよ?

でも、それに至った経緯についてはさっぱり納得いかないけどさ。
いくら私がソッチ方面に疎いといっても、「こんなのもあるよね~♪」と軽く流すわけにはいかない気がする。

……
…………

と、とりあえず昨夜のことはおいておこう。
これを気にしていると、まとまるものもまとまらない。


私は、もう一つの気になっていることにゆっくりと想いを馳せる。

『もうすぐ死ぬ』

キョウの言葉を胸の中で反芻せずにはいられない。

あんなに小さい黒猫が。
どうしてもうすぐ死んじゃうのだろう。

もっとも、どう見ても20代前半にしか見えないキョウだって1000歳超えているというのだ。魔界のモノの見た目年齢は、その人生とは比例していないに違いない。

でも、昨日知り合った人の余命が少ないって言われると。
やっぱりいい気はしないわよ。

例えソレが、得体の知れない、しかも人のあんなシーンを平気で見ちゃうような吸血鬼だと言われても。
私はついついそう思ってしまう。

……私って、甘すぎるのかしら?!