魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】

「ユリア」

遠くで私を呼ぶ、艶やかな声。
差し伸べられた手。
完璧に計算されつくしたようなポーズは、まるで駅に貼ってある芸能人のポスターのように魅惑的で。

その、黒曜石を思わせる瞳にうっかり自分の視線を絡めてしまったが最後。
まるで催眠術にかかったかのように、私は立ち上がって歩き始める。

ねぇ、そうやって、椅子から立ち上がるだけなのに、どうしてこうもうっとりするような仕草になっちゃうわけ?
どこかで失敗なんて、しないのかしら。

何一つ疑問を口に出来ない間に、私はキョウの胸の中に抱き寄せられていた。

「俺が居ない間、淋しかった?」

……彼が居ない期間。
  記憶をなくしていた時間を含めても一月にすら満たない時間。

もしも、私がその気持ちに淋しいと名づけるなら。
アナタは、マドンナ・リリーが生まれ変わるのを待つまで一体、どんな気持ちで待っていると言うの?

「別にっ」

気持ちとは裏腹な、短い言葉しか出てこない自分にちょっと苛々する。
それなのに。
キョウはくすりと笑って

「ユリアは本当、照れ屋だよね」

なんて。
そっと、呟いた。

そうなのかな。
私、照れ屋だからこうして気持ちと裏腹なこと口にしちゃうのかな。

言葉を紡ごうと顔をあげた途端。
形の良い紅い唇が、私の唇を奪う。

重ねる、という言葉では全然足りない。
甘く、深く、荒々しく。

息をつくのも難しいほど。
文字通り、唇を「奪って」いく。