魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】

「奥様なんですね。
すみません。
会社立ち上げたばかりで、いつも社長を会社に足止めしてしまって」

有能、を擬人化したような青年が丁寧に私に頭を下げる。
えー。
私、いくらスーツを着てるからってまだ16歳になったばかりなんですけど。

ねぇ。
不自然だと思いませんか~?

……それとも私。意外と老けて見えてるのかしら……。
  落ち込むわぁ。

でも、落ち込んでいる場合でもない。

「いえ、そんな、とんでもございません。
こちらこそ、主人がお世話になっております」

何ゆえ、私がこの前ドラマで見た主婦の台詞を口にしなければいけないのかしら~。

「まぁ、若いのにしっかりされてるんですね。さすが、社長の奥様ですわ」

OLという言葉がぴったりの、若い女性が口を開く。
キョウが無表情に言う。

「ああ、田中君。
コーヒー淹れて貰っても?」

「かしこまりました」

そのまま、キョウにエスコートされて社長室へと入った。

ふかふかとは言い難い黒いソファに腰を下ろす。

急展開に頭も身体もついていけてない。

丁寧に置かれたコーヒーに手を付ける気にもならず、私は、きっと馬鹿みたいな顔してるんだと思う。
多分、「ぽかん」って言葉を絵にした、みたいな顔。