魔王様！まさかアイツは吸血鬼？【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】

冷たい風を少しだけ緩ませるような、うららかな日差しに眩しさを感じ、瞳を細めた刹那。

「わざわざいらしていただいて恐縮です」

丁度警察署から出てきたジュノが、キョウを見て丁寧に頭を下げた。
まるで見計らっていたかのようなタイミングに、細めた目を丸くする私。

「ほらね？」

と、キョウが得意げな顔で私を見た。

チッと。
心の中で舌打ちをしたのは私だけの秘密、ということで。


その数秒後。
私とキョウが手を繋いでいるということに気づいたジャックが、
「ユリア様！記憶戻られたんですね」
と、にこやかに言った。

「ええ、色々あって。
その、ご迷惑おかけしました」

不思議そうに、かつぼんやりとそのやり取りを見ている綾香を尻目に私はぺこりと頭を下げた。

ちゃんと、けじめはつけとかなきゃって思ったし。
それに、ジュノには確かに、いろいろと迷惑は掛けた気がする。

少しぼうとしていた綾香の焦点が、ようやく私にあった。
その表情に焦りが浮かぶ。

「百合亜！
私、お見合いに行かないと間に合わないわ」

……ほらね？

私はちらりとキョウに視線を送る。

キョウは、いたずらがばれた子供みたいな顔をしてウインクしてから、唇に指をあて瞳を閉じて何事か唱えた。

直後。
すぅと、綾香が意識をなくす。
倒れかけた綾香を、ジュノが慌ててその腕に抱き寄せていた。