魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】

「今からどうするの?」

他に人の居ないエレベータの中で、キョウに問う。

「そりゃもちろん、家に帰って甘い時間をたっぷり過ごすに決まってるじゃない」

滑らかに、ためらいもせずにそんな返事が来た。

……いやいやいや。

「綾香のことはどうするの?」

「どうするって言われても。
ジュノが行ってるんだったらそのうち、皆の記憶を消して戻ってくるさ」

「ジュノがそんなに手際よく出来ると思う?」

「そんなに心配?」

キョウが私を見る。
そりゃ、あなたにとっては忠実な僕(しもべ)で絶対的な信頼をおいてらっしゃるのは分かってますけど。

私の知る限り、かなりの天然です。
あのお方。

「少しだけ」

はっきりそういうのも忍びなかったので、適当に語尾を濁す。

「そう?ユリアって、意外と心配性なんだね」

そんなところも好きだよ、なんて、こっちがドン引きするくらい甘い台詞をさらりと口にすると、キョウは左手を上げてパチリと鳴らした。

懐かしい風が吹き、直後。

私たちは警察署の前に移動していた。