魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】

私の心を捉える、素敵な低い声でそう呟くと、一人さっさと歩いて部屋から出て行った。

俯いた私の視界には、磨き上げられた黒い革靴くらいしか入らなくて。
慌ててその後姿を追う。

……じゃあ、さっきまでの戯言は、全部私を元気付けるための冗談だったっていうの?

そうとも言い出せず、まごついている私のためにキョウは少しずつ歩幅を狭めてくれる。
そして。
これ以上無いという、ベストなタイミングでさっとその右手をこちらに差し出した。

振り向かないのでその顔が、照れているのか笑っているのか、確認することは叶わないけれど。

差し出された手を握れば、そこには、懐かしいほどの暖かさだけがあって。
握り返されたその握力は、ふうわりと、心にまで心地良い。


ここが、ホテルの廊下という公共の場ではなかったら、こっちからキスして欲しい、抱いて欲しいと迫ってしまいそうなほどの甘やかな気分で、心と身体が満たされていく。


……って!私ってば。

エロ度って伝染しちゃうのかしら!
気をつけないと。

「ユリア、どうかした?」

唐突に頬を赤らめた私に、不審な視線を向けるキョウに「別に」なんてぶっきらぼうに言葉を返しながら。
不必要なまでに真剣に、エレベーターの上に表示されている数字を見つめることで、彼の視線から逃げることに決めた。