魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】

「リリーは知らなかったみたいだけど、有名なクリスマス・キャロルだよね」

と。
人の真剣で重たい決意も虚しく、神様がさらりと真実を口にする。

日本人はねぇ!
クリスマス・キャロルって言ったら全く違う曲を想像するんだから!
例えば、そう。

稲垣潤一さんの「クリスマスキャロルの頃には」とかさ。

……なんて、威張って言い出せる雰囲気でもないので、私は黙ってジャックを見ていた。

後ろの美声の持ち主も、とても気になるけれど、どうしても、何かしらの圧力がかかって後ろが振り向けないのだから仕方がない。

「それでさ。
ここに来て貰ったのはもちろん、のど自慢のためなんかじゃないよ?
分かってる?
うっかりつられてこっちまで歌いそうになっちゃったじゃない。勘弁してよ。魔界の神がどうして、人間界の神に対して唄なんて歌わなきゃいけないの。
どう考えたって不自然でしょう?
まぁ、別に歌ってないんだからいいんだけどねぇ。
それでさ、アスモデウス。
契約を途中で降りたいって子猫ちゃんが言うんだけど、どうする?」

あまりにもすらすらと喋るものだから、肝心なところまで聞き逃しそうになってしまうけれど、当の本人にはきちんと伝わったみたい。

それにしても、今、私の記憶が確かならば、キリスト教の七つの大罪では色欲を司るといわれる悪魔の名前がさらりと耳を滑っていった気がするのだけれど。

……それを名前にしてるのは、偶然?それとも。
  言い知れない怖さがコールタールの如くどろりじわりと胸の奥に染みてきて、私は慌てて首を振る。