魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】

唄が余韻を残して切れた、そのとき。

『Angels we have heard on high
Sweetly singing o’er the plains,』

同じメロディを、今度は英詩で。
ジャックが歌いだした。

少年合唱団を思わせるような、華麗な歌声だった。
でも、さっき聞いたフランス語のものよりは、薄い気がする。

それでも。
聞き惚れるには十分なほどの歌声だった。

「グロリア、ですよね?
アメリカに居た頃、クリスマス前のミサでよく歌ってました」

懐かしい、と。
忘れていた卒業アルバムをうっかり引っ張り出してしまった、大掃除中の女性のような軽やかな笑いを漏らす。

「そう。
日本語だと『あらののはてに』」

そのとき。
私の耳に、よく馴染んでいたはずの低い声が入ってきた。

間違いなく、さっきフランス語でその『あらののはてに』を聞かせてくれた人のものだと分かる。

心臓が、何故か。
外に取り出して鷲掴みにされたような、ぎゅっとした、だけど心地良い痛みを感じて私は動揺する。

ついでに、この際私がこの『賛美歌106番 荒野の果てに(あらののはてに)』を今の今まで全く知らなかったという事実は、お墓のなかにまで持っていこう、と。密かに決意もする。