魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】

ふらり、と。
考える前に立ち上がっていた。

オヤジから逃げたかったのかもしれないし、綾香に声をかけにいきたかったのかもしれない。

「お嬢さん、はじめまして」

脂ぎったオヤジが何故か私を見てにこりと微笑んだ。

「……は?」

私は目を丸くする。

「弓下さんですよね」

確かに、このレストラン、今はほとんど客は居ないしここからでは綾香の居る場所は死角になっている。

……どうしよう。

頷くべきか、否定するべきか。
とはいえ、今頷いたところで時間稼ぎにしかならないわけで。

どうせいつか説明するなら、今したほうがいいわよね?

私は決意を持って唇を開いた。

「あの」

そのとき、目の端にふらりと幽霊のように歩く人影が映った。
キラリ、と。
輝くものも目に映る。