魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】

「ユリアちゃん、駄目だよ」

ジャックの痛みを伴う真剣な声は、でも。
そよ風ほどの影響も私の心には与えない。

「いいの。
ね?
その、私が忘れている誰かも、10日待てないような短気な人じゃないですよね?」

やれやれ、と。
神様はハリウッド映画で見るアメリカ人のようにオーバーに肩を竦めて左側を見た。

「彼女、記憶が無いときの方が君の事信頼しているんじゃない?
……冗談、冗談。
いいよ、私は自分で考えるんじゃなくて君たちの祈りを聞き届けるのが仕事だからね。
私情は挟まない」

直後。

ふわり、と。
誰かが私の髪をすくって唇付けた気がした。

そうして。
さっきまで、確かに感じていた<何か>の気配が、まるでシャボン玉が割れて消えてしまうのと同じくらいあっさりと。
私の傍から消えて無くなってしまった。

ぎゅん、と。
かつてないほど激しく、心の一部が悲鳴をあげるような痛みをたてた。


手を放しちゃいけなかったんだ。
忘れていいなんて、言っては、いけなかったんだ。

そう気づいた時には、もう何もかもが手遅れで。


「じゃあ、次はイブに会えるといいね」

神様は優しさのベールで覆い隠したような、感情の見えない声でそう言うと、直後、姿を消していた。

私は、頬を伝う熱いものが涙であると気づくまでずっと。
独り、声を堪えて病室のベッドに座っていた。