魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】

「駄目よっ」

だから、そうやって優しさに包まれた空気を壊してまで声を張り上げたのは私だった。

私は記憶が無いだけなのに。
それを取り戻すためにジャックが消えなきゃいけないなんて。

そんなの馬鹿げてる。

どれほど大事な記憶か知らないけれど。
命より大切な記憶なんて、多分無いと思う。

「駄目、ジャック。
後10日でも約束した命があるなら生き抜いて?
ねぇ、私の記憶はその後に甦るのよね?」

私は神様を見つめた。

ブルーがかったグレーの瞳は、曇り空を思わせた。
感情の読めない、瞳。
緩やかに微笑む唇の、完璧なまでの美しさに背中が粟立つ。

「ああ、甦るとも。
それが×××の望みであれば」

ついには。
神様が口にする固有名詞すら聞き取れなくなったけど。

私の心は、荒くれる日本海のように騒いでいるのも分かっているけど。

たった10日。
私は、待つべきだと。

頭で判断できるほどの冷静さは残っていた。