魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】

後になって思えば。

ずっと私たちを睨んでいる粘っこさを含んだ二つの目があったことに気づかなくもない。

でも、キョウを見つめる人なんていつだって星の数ほど居たから、私は全く気にも留めていなかった。

まさか、その人が。
私を狙っているなんて、思わないでしょう、普通?


ゆっくりと板を滑らせる。
ボードって、自転車に乗るのに似ているのね。

はじめはどうしていいのか見当もつかなかったのに、板の動きに合わせて自然と膝が折れていく。
右へ、右へと。
私はゆっくり板を滑らせて行く。

流れていく冷たい風を楽しむ余裕は無かったけれど。
人を避けるくらいなら出来た。

……私って、上達早くない?

得意げになって、少し、板の角度を変えた。

何故なら、私がターンしようと思っていた箇所にピンクのウェアを着た女性が居たからだ。
彼女をどこかで見た気がする。

もちろん、このうす曇の空の下、人がごった返す雪山の中で。

だけど、さっきから沢山の人とすれ違っている私は、そのことを思い出すよりも、ボードでキョウのところまで滑って行くことの方がずっと重要だったし、そのことに集中しないと転んでしまいそうだった。

なので、即座に切り替えた。


から。

彼女が手に握っている、ナイフになんて気づくはずもなかった。

そして、その瞳に宿っているおぞましいほどの殺意にも。