魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】

「大丈夫、落ち着いて。転んでも痛くないから」

歌うようにそんなことを言っている悪魔が一匹。

普通さ、スノーボード初心者を突然リフトに乗せて上まであげちゃうのはどうかと思うんですけど。
私、何の基本も聞いてませんよ?

とはいえ。
もう、逃げ場も無い私は、キョウが降りるタイミングに合わせて、そっと板を雪の上に乗せるほかなかった。

「きゃぁああああっ」

当然のように、ボードは私を乗せたまま滑りはじめる。

後ろから次の人が降りてくることを考えたら、容易にその場で転ぶのも躊躇われ、私は。
仕方が無く叫びながらも、目の前をするりと滑って見せるキョウに合わせて板を滑らせるほかない。

もちろん、雪山でもキョウの好みは変わらず。
上から下まで黒で統一したウェアだ。ゴーグルがこれまた、良く似合う。


それにしても、なんてスパルタ!!

「ユリア、こっちに来て右足もボードにつけて」

にやりと笑う様は、優しい恋人と言うよりはむしろ鬼コーチの風格だ。

いいなーって目線でコイツを見つめているそこの黄色いウェアを着ている女の子に押し付けて、私は彼女の隣にいる優しそうな彼氏を譲ってもらいたい。

なんて、不埒な事を考えていたのがバレたのか。

「ユリア、よそ見していると置いて行くよ」

と、低い声で悪魔が怖いことを言う。