魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】

「それとも、一緒に入ろうか?」

「キョウっ」

私は濡れた腕を伸ばして、そのまま彼の首筋に抱きついた。
まだ、硝煙の匂いが残っている。

それでも。
その向こうにいつもの、今ではもう『好き』としか表現できないような慣れた彼の匂いがする。

「少しだけ、こうしていてもいい?」

「好きなだけ、こうしていればいい」

キョウは濡れるのも厭わず、バスタブの向こうから私の背中を抱き寄せてくれた。

ひどく不安定な抱きつき方は。
今の私たちのひどく不安定な関係にとても似ていた。

どれほど近くに居ても。
住む世界さえ違うのだ。

私はバスタブの中。
彼はバスタブの外。

たとえ、指をパチリと鳴らして三秒足らずの距離であったとしても。
そこには、歴然とした「壁」があるのだ。

キョウとジュノの間にそれがあるように。


ううん。
人間と、悪魔なんだから。

きっと、それよりずっとずっと、高くて厚い。

壁、があるのだ。