魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】

「それで、ホストクラブで借金を?」

「ううん。
あそこは良心的なところだもの。
私の稼ぎのほんの一部で足りるの。
でも、パパの弟がパパの連帯債務者になっててね……」

そこまで言うと、綾香の瞳にみるみるうちに涙が溜まった。
頬を伝って流れていく。

ジャックが、寄り添う子猫のようにそっと綾香の涙を舐めた。

もっとも、彼の姿は猫でなく王子様を思わせるような人間の風貌なので、その様子は微笑ましいというよりは、どこかエロティックにしか見えないのだが。

それでも、そんなジャックに励まされたと感じたのか。
ふふ、と綾香が笑う。

「これを企てたのは多分、ソイツだわ。
でも、家を捨てたらママまで見捨てることになっちゃうし……」

なんてこと。
なんて重たすぎる話。

これを女子高生が一人で抱えて解決しなきゃいけないなんて。
どうして人生は残酷なのだろうと、私は唇を噛まずには居られない。

「病院にはお金を自動引き落としにでもしてもらえば?
必要なときにお母様の口座にこっそりお金を振りこめばいいじゃない。
ネットバンキングを使えば、ATMから居場所を割り出されるってこともないし。
うん、そうしなよ」

私は持てる知識を振り絞ってアドバイスしてみる。
もっとも、こんな小さなことしか思いつかないのだけれど。