キョウは瞳に剣呑な色を浮かべ、優雅に微笑む。

「止めてくれないかな。
俺のお姫様が怖がるから」

と、私を背中に庇いながら、おはよう、と慣れた同僚に挨拶するような気楽さで口を開く。

「……ってめぇっ」

舐められていると感じたのか。
青筋を立てて怒った一人の男がまさに、拳銃の引き金に手をかけた。

その時。

拳銃はまるで飴細工のようにぐにゃりと曲がった。

バァンっ

乾いた音が一発響く。

男は、自分で引き金を引き己の顔に弾を受けたのだ。

ぐしゃり、と、肉がひしゃげた音。
そして、暴力的なほど鮮やかに肉片と血が飛び散った。

硝煙の匂いと鉄の匂いが混じりあい、なんとも言えないおぞましい死の香りが部屋を満たしていく。

「……ねぇ、殺したの?」

背中で震えながら聞く私に

「いや、頬の肉が削げただけ」

と、容易い返事がやってきてうっかり吐きそうになる。

「だって、脳漿飛び散ったら嫌でしょう?」

とか、気遣ってやった俺を褒めてくれと言わんばかりに得意げに言ってる意味が分からないんですけど?!